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貧血があると、将来、認知症を発症する可能性が高くなる?(1)

貧血は高齢者の認知症と関連があると長い間考えられてきました。しかし、否定的な結果も報告されています。実際のところどうなのでしょうか?

昨年の12月にイスラエルの疫学調査の結果が報告されました。(Gerontology (2022) 68 (12): 1375–1383.)
2002 年から2012年までの36951人の追跡調査の結果です。65歳から113歳までの高齢者が含まれています。この研究での貧血の定義はClalit Health Services (CHS) とWHOの基準を用いており、CHSの定義では、男性はヘモグロビン14 g/dL未満 、女性は12 g/dL未満を貧血とし、WHOの基準では、男性13 g/dL未満、女性12 g/dL未満を貧血としています。さらに、貧血を、軽度(男性:ヘモグロビン11~13g/dL、女性:11~12g/dL)と中等度~重度(男女ともにヘモグロビン8~10.9 g/dL)に分類しました。
10年間の追跡期間中の結果では、7180人の被験者(19.4%)が新たに認知症と診断されました。年齢と性別を調整した多変量コックス回帰分析を行ったところ、認知症発症のハザード比 (HR) は、CHSの貧血基準では1.45 (95% CI: 1.37~1.54)で、WHOの貧血基準では1.51 (95% CI: 1.41~1.61) でした。つまり、貧血がある人の方が認知症を起こしやすいという結果でした。また、貧血が軽症よりも中等度から重症の方が、認知症を発症する人の割合は高い傾向にあり、ヘモグロビンが1.4g/dL減少するたびに、認知症のリスクは15%増加していました。認知症発症までの期間は、貧血のある被験者では1527日だったのに対し、貧血のない被験者では2146日でした。
この疫学研究では、高齢者では貧血が進行するほど、認知症を発症するリスクが増加し、発症までの期間が短くなるという結果でした。

文責 東郷かみや内科・血液内科・がん内科院長 神谷悦功 愛知郡東郷町春木塩田1812